#08

カテーテル治療の
質を高める
血管内イメージング技術の追求

心臓カテーテル治療に欠かせない
血管内イメージングとは

心疾患のなかでも心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患は、生活習慣や加齢によって動脈硬化が進行し、冠動脈が細くなることが原因とされています。手首や太ももの血管から通して治療するカテーテル治療は、バルーンやステントを用いて心臓や下肢の狭くなった、あるいは、詰まった血管を広げる治療法で、血流を改善させることで効果をあげています。このカテーテル治療に際して、虚血性心疾患の病態の解明で重要な役割を果たしているのが、「血管内イメージング(画像診断)」です。血管内の高精細な画像が得られ、血栓や動脈硬化の性状を把握することができることから、カテーテル治療の前に、病態診断や治療方針の決定に役立て、また、治療後のステント留置の評価などに使われています。

カテーテル治療の流れと血管内イメージングの役割

カテーテル治療の流れと血管内イメージングの役割

日本では、血管内イメージングの普及が進み、心臓カテーテル治療(PCI)症例数における使用率は90%を超えています。治療前に病変部の状態をしっかり把握することが主流となり、今や、日本のカテーテル治療に血管内イメージングは欠かせないものとなっています。

高精細な画像を得るための二つの技術
超音波(IVUS)と光(OFDI)

血管内イメージングには、血管内超音波検査法(Intravascular ultrasound, IVUS)と光干渉断層診断法(Optical Frequency Domain Imaging, OFDI)の二つの方法があります。
IVUSでは超音波の反射を利用して、血管内部を断層画像で読影します。先端に搭載した超小型センサーのある細いカテーテルを冠動脈内に挿入し、病変部まで通した後、センサーから発信される超音波で血管内の画像を取得します。観察深度が深く、血管内膜から外周まで広範囲にスキャンすることができ、また、血球を除去する造影剤が不要のため、腎機能に左右されずリアルタイムで病態を観察できることから、主にステント留置前などの術前評価に使われています。

血管内超音波画像診断装置(IVUS)画像取得のイメージ

血管内超音波画像診断装置(IVUS)画像取得のイメージ

一方、OFDIでは近赤外線を用いて、血管内の状態を高解像度の画像で読影します。IVUSと同様にカテーテルを血管内に挿入し、先端部から近赤外線をあて、干渉法*によって血管の断面を測定し、画像を取得します。超音波では難しかった血管壁の組織性状の違いまで映し出すことを可能とし、石灰化や線維被膜の厚みなど詳しく観察できることから、主に治療後の検査に使われ、術後のステント留置の評価などに役立っています。

テルモではこれら二つの技術を保有し、高精緻な画像取得を得意とするイメージング装置と高性能なカテーテルで、他にはない「イメージングシステム」を提供しています。さらに、血管の拡張治療に必要なバルーンカテーテルやステントなど、ニーズに合った治療デバイスを充実させ、安全で効果的なカテーテル治療に貢献することを目指しています。

  • *

    干渉法:複数の光の重ね合わせによって、光の波を強めたり弱めたりすること。

国内初のIVUS開発に成功
技術の可能性を諦めない心が実を結んだ

テルモのイメージングシステムの開発は、30年ほど前に獲得した超音波技術から始まります。1980年代、乳がんを対象とした超音波診断装置を発売。通常、超音波診断装置の周波数は3.5~7MHzのところ、10MHzの超音波を使って体表面で乳がんの診断を可能とする装置を開発しました。ところが、当時の乳がん検診は保険適用されておらず、市場が拡大しなかったことから撤退を余儀なくされました。その後、手元に残った10MHzの超音波技術を用いて、腹腔鏡手術用の超音波小型プローブの開発に着手したものの、事業性が見込めず開発は中断されました。

そこで着目したのがIVUSでした。超音波技術を資産にするために紆余曲折していた頃、医療市場では、心臓カテーテル手術が増えていることから米国を中心にIVUSのニーズが高まり、日本でも導入が進められていました。また、社内では、カテーテル手術に用いる高性能カテーテルや、カテーテルを病変部まで運ぶガイドワイヤーの研究・開発をしていました。それらが後押しとなり、保有する超音波技術を生かせるIVUSの開発に踏み切ったのです。

当時、IVUSには、一般的に血管の湾曲部において画像がゆがんでしまうという課題があったことから、テルモでは「どんな血管にも入り、安定して画像を取得できる」イメージングシステムを目指し、画質だけではなくカテーテルの入りやすさと、画像取得の安定性を重視した製品の開発を進めました。2000年に発売した国産初の超音波画像診断システムでは、イメージング装置に加え、最小口径で、かつ、耐久性を兼ね備えた専用カテーテルの開発に成功しました。そして、そのIVUS開発で培った技術はOFDIの技術開発へとつながり、センサーを高速で回転させてもカテーテルがぶれずに安定して画像を得られる技術に発展しました。

テルモの血管内イメージング技術は今もなお進化を続けています。画像の高精細化や画像処理の高速化を実現したイメージングシステムは、準備・診断・読影などの時間の短縮につながり、より安全で効率的なカテーテル治療に貢献しています。また、難症例や手首からの下肢病変部治療に特化したカテーテルを開発するなど医師のニーズに応えています。

血管内画像診断装置とイメージングカテーテルの変遷

血管内画像診断装置とイメージングカテーテルの変遷

新たな価値の創造を目指して
より良いカテーテル治療のために

IVUSやOFDIにはそれぞれ長所や短所があり、どちらか一方であらゆる情報を得るには限界があります。テルモでは、IVUSとOFDIの両方を兼ね備えたデュアルセンサーシステム(DSS)を開発しています。これは、1本のカテーテルに超音波振動子と光学レンズを配置したもので、現行のシステムと操作感は変わらず、同時にIVUSとOFDIの画像を取得したり、単独で使用したりと、症例に応じて機能を使い分けることを可能とします。

さらに、治療技術やIT技術の進化とともに、イメージングのデバイスにも新しいニーズが生まれています。将来は、AIを活用し、IVUSの読影支援、治療方法やデバイス選択の提案などの治療ガイドを備えるような付加価値を高めた装置の開発を目指しています。操作性や医療経済性などの技術向上で医療従事者のニーズに応え、より良いカテーテル治療に貢献できるように、テルモの技術者たちは挑戦し続けています。

イメージングカテーテルのセンサーを溶着する
イメージングカテーテルのセンサーを溶着する(溶着部分拡大)

イメージングカテーテルのセンサーを溶着する

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